僕はいわゆる「D2C」と呼ばれるものが好きだ。モノを作って売るという根源的な行為で、しかも自分が良いと思ったものを作って自分で売る。そんな商売がD2Cだと解釈してるので、好きなのだ(D2Cの解釈はいろいろあるので、異論は認めますが、そっとしといてください)。
D2Cと言っても化粧品やらアパレルやら雑貨やらいろいろなものがあるが、個人的にはもっと食品のD2Cが増えてもいいのではないかと思ってる。健康的なおやつの定期購入『snaq.me』などはそのカテゴリに入るかもしれない。今後はパンとかケーキとかも増えていくといいなと思ってる。
パン、ケーキ系のD2Cは増えてもらいたいが、D2Cに付き物の「市場規模問題」はどうだろうか。これまであまり調べたことないので、この機会にちょっと調べてみました。
『Le TAO』や『東京ミルクチーズ工場』、渋谷スクランブルスクエアにもある『Butter Butler』などを展開する寿スピリッツ。2,000億円を超える時価総額を誇り、業績右肩上がり。そして2001年には1.5%しかなかった利益率も14.7%まで改善しています。
プリンが有名な老舗洋菓子店モロゾフも上場してて(東証一部)、時価総額は183億円。売上高は微増ですが、利益率は改善傾向にあります。
(参照元:帝国データバンク「兵庫県の菓子メーカー93 社の経営実態調査 2019.2.18.(PDF)」)
モロゾフがある神戸(兵庫県)は洋菓子がとても盛んな地域ですが、その兵庫県内のお菓子メーカーでモロゾフはトップの売上高を誇るそうです(上記表)。バームクーヘンで有名なユーハイムと売上高では2強を形成していますが、4位にランクインしているスタジオ・シュゼットに注目です。
スタジオ・シュゼットを含むシュゼットグループの売上高は直近(2019年度)では約250億円。『アンリ・シャルパンティエ』や『シーキューブ』で有名なシュゼットですが、堅調に売上高を伸ばしてグループ売上高で2強に追いつくのも遠くないかもしれません。余談ですが、10数年前にアンリのチーズケーキを初めて食べた時、美味しすぎてびっくりした思い出が。
シュゼットと売上高が近しい洋菓子、和菓子メーカーを並べたのが上の表です。『シーガル』でおなじみのみんな大好きヨックモック、大きめなケーキで満足感あるコージーコーナーと比べるとシュゼットの好調さが目立つ。僕、ヨックモック、コージーコーナー、大好きです。虎屋は横ばいだけど、それが逆に老舗の安定した強さを感じる。
(参照元:https://www.toraya-group.co.jp/toraya/tradition/history/pdf/17_siryou.pdf(PDF)」)
僕がWebデザイナーになった頃、Webデザイン本で必ず取り上げられていたのが虎屋のホームページだったんですよ。当時からとてもスタイリッシュでかっこいいサイトだった。そんな虎屋のサイトに「とらやの歴史」っていうコーナーがあるのですが、そちらにあった「資料編」がとても興味深かった。上記のような家系図や戦後から現代までの売上高や従業員数の推移など、貴重なデータがたくさんあって面白いのでぜひ見て欲しいです。
さてここまで老舗ばかりを取り上げたが、ベンチャーっぽい洋菓子屋さんもある。有名なのがBAKE。北海道の老舗洋菓子店きのとや創業者の長男長沼真太郎氏が2013年に創業。チーズタルト『BAKE』やアップルパイ『RINGO』、『PRESS BUTTER SAND』などヒットを連発してるが、2017年にポラリス・キャピタル・グループが100億円強で買収(取得した株式の割合などは不明)。なんとなく「もうちょっと評価高くても良いのでは…」と当時思った記憶が。
旧BAKE
2013年4月設立
2014年6月期 売上高 1億円
2015年6月期 売上高 10億円
2016年6月期 売上高 37億円
2017年6月期 売上高 約70億円— Takanori Oshiba (@takanori1976) January 23, 2020
一方関西のチーズタルトの雄として知られるのが『PABLO』だ。PABLOを運営するのはドロキア・オラシイタ社。元々は家業のリサイクル屋を引き継ぐ形で嵜本三兄弟がMKSコーポレーションを設立。そして新規事業で生まれたのが『PABLO』。その辺の沿革を簡単にまとめたのが下記。
2004年6月 MKSコーポレーションを兄弟3人で設立(ブランドリサイクルショップ運営)
2008年7月 新事業として洋菓子店「パティスリー ブラザーズ」開店
→急拡大で年商8億円を超えるも行き詰まり閉店
2011年9月 焼きたてチーズタルト専門店PABLO一号店オープン
2011年12月 ブランド品買取事業を分社独立
→株式会社SOU 代表は末弟の晋輔氏。2018年にマザーズ上場。「なんぼや」
2012年8月 期間限定JR大阪駅店オープン 日本一の坪売上店舗として記録を更新
2013年3月 関東初上陸(渋谷)
2016年2月 MKSコーポレーションからDays&Co.Groupに社名変更、ホールディングス化
→『PABLO』のドロキア・オラシイタ社などを傘下に
2018年3月 Days&Co.Groupからニュースタンダードグローバルオフィスに社名変更
元々の事業であるリサイクル業は三兄弟の末弟である嵜本晋輔氏が分社独立し、2018年にマザーズ上場。元Jリーガーでもある晋輔氏の上場は話題にもなった。晋輔氏は現在ドロキア・オラシイタの取締役にも名を連ねるが、長兄将光氏が経営するドロキア・オラシイタの売上高がこちら。
ドロキア・オラシイタ
2012年3月設立
2014年11月期 売上高 26億円
2015年11月期 売上高 30億円
2016年11月期 売上高 45億円
2017年11月期 売上高 51億円
2018年11月期 売上高 47億円・チーズケーキPABLO
・「なんぼや」代表嵜本晋輔氏の兄、将光氏が経営— Takanori Oshiba (@takanori1976) January 23, 2020
直近の数値はわからないが、PABLO自体は横ばいのように見える。でもドロキア・オラシイタは高級食パンなども新たに展開し始めてるんですよ。ついにきたぞ、パン!!
はい、そんなわけでいろいろ見てきましたが、最後にスタートアップのD2C的な洋菓子を紹介して終わろうと思います。
TLに流れてきて知ったのがHELLO BASQのバスクチーズケーキ。バスクチーズケーキは最近セブンイレブンでも猛烈に販売されていて知名度が上がってるスイーツ。HELLO BASQを運営しているのは食材キット『TastyTable』をやっているブレンド社。オンラインだけでなく、ポップアップもやってるみたいなので、いつか買いたい。
そして界隈で最も有名なスタートアップのD2C的な洋菓子と言えば『Mr.CHEESECAKE』だろう。
みんな食べてて、みんな美味しいって言ってるんだけど、僕はまだ食べたことない!!なので味については述べられないが、とにかく細部までかわいい。とくにWebサイトのデザイン(主に写真)はすごくキレイ。そして僕が一番好きなのはこちら。キャンバスに油絵の具を塗りつけたようなイラストがすごく良い。
一年前くらいに大好きなあやたん氏から「実はチーズケーキもやってるんです」ってこっそり教えてもらってびっくりしたんだけど、あやたん氏とMr.CHEESECAKEについては下記のエントリをご覧いただきたい。
もうすぐ2019年も終わる〜
2019年の象徴的な出来事はMr. CHEESECAKEと田村さん@Tam30929 に出会ったこと。
newnのテーマであるEmpower doersを形にする、グループとして同じ船に乗る仲間として2020年は世界に挑戦します、というお知らせと、それに至る経緯を書き記したnote https://t.co/kqFpSLgqhA— あやたん / newn,Inc. (@ayatan48) December 31, 2019
まだまだ調べたいなーと思ったけど、この辺で一旦締めます。また面白い食べ物系スタートアップなんかが現れたらまた調べようと思います。というわけで約半年ぶりの更新でしたー。また更新していくぞー。