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約100年の歴史を誇る老舗「木村石鹸」がTLを賑わし始めたこの数年間のまとめ


 
スタートアップ界隈ではあまり知られてないかもしれないかも(知られてるかも)だけど、大阪にある木村石鹸に数年前から注目している。木村石鹸は大阪にある創立100年近い老舗の石鹸メーカー。「釜焚き」という手法で職人さんが手作業で石鹸を作り続けています。そう書くとスタートアップ、ベンチャーとは程遠い世界線の企業に思われるかもしれません。それに「インターネット界隈」のブログなのに?と思う人もいるかもしれない笑 大田区の個人経営町工場が出自の僕なので、何らかのシンパシーを感じたのかもしれない。
 
 
そんな老舗である木村石鹸ではあるがECやネットを活用したプロモーションも活発で、直近の製品である「正直な処方で、髪を本気で良くすることだけを考えたシャンプー&コンディショナー『12/JU-NI』」はクラウドファンディングMakuakeを活用したりしてて、TLなどでも目にした方もいるかもしれない。そんなわけで、今回は木村石鹸をちょっと取り上げてみようかと思います。ネット上に木村石鹸の記事はわりと多く、点在しているので、一箇所にまとめたかったという数年来の個人的todoでもある。
 

 
直近の売上高と主なできごとをまとめた図になります。2017年期以降の数値はインタビュー記事などで語られているもので、それ以前のものは日経の記事に載っていた図から導き出した推定値です。だいたい合ってると思います。
 
 
1924年に石鹸生産を開始し、今年で96年。家庭用石鹸6割、業務用石鹸4割(2013年)というような売上比率で、家庭用に関してはほぼ大手メーカーのOEM先として安定経営されてきた。しかし2000年以降はいくつもの問題を抱えながらの経営となっていたようだ。いくつかの記事をまとめると、
 
・売上は安定はしているが、右肩下がり
・取引先2社への依存
・事業承継の2度の失敗(長年創業家によって経営されてきたが、創業家以外への2度の事業承継)
・ヒット商品を開発するも、すぐに過当競争に巻き込まれ、膨れが合ったコストが経営を圧迫
・自社商品を開発するも大失敗で5,000万円の在庫を抱える
 
 
そんな状況の2013年に創業家の木村祥一郎さんが家業を引き継ぐために大阪に戻ります。
 
木村祥一郎さんは大学在学中に友人たちとITベンチャーを立ち上げます。それが今のイー・エージェンシー。木村さんは創業から18年に渡り取締役副社長として経営に携わります。現在イー・エージェンシーの社員数は国内外合わせて200名以上の規模になっているようです。
 
 
実家に戻った木村さんは上記問題を解決すべく、自社の良い面を活かし、ブランドの強化、オリジナル商品の開発などを行なっていきます。そして2015年4月に発売されたのが『SOMALI』です。天然素材の優しさと石けん職人のこだわりで作られたハウスケア、ボディケアブランド。
 



『SOMALI』ブランドサイト

 
『SOMALI』は当初BASEで販売されており、BASEのショップをいろいろ検索してた時に偶然見つけ、BASEのオウンドメディアで紹介させてもらった。それが2016年1月なので、『SOMALI』発売から半年以上経ってたんだなぁ。
 
『SOMALI』の発売あたりから木村石鹸を取り上げた記事がたくさん出るようになった。
 
・東京でITベンチャーを企業した創業家の息子が大阪に戻って家業を継いだ
・創業90年の老舗石鹸メーカーがオリジナルのおしゃれで質の良い洗剤を作った
 
というストーリーはとてもわかりやすく、メディアとしても取り上げたくなる。
 
そしてもう一つ、峰松さんの存在も大きいのではないだろうか。外資系大企業で働いていた若い「センスフルガール」が突然大阪の町工場に転職してきた。その刺激は社内外に大きく作用したのではなかろうか。そして彼女自身のセンスとパワーも木村石鹸躍進に大きく貢献したのは間違いなさそうだ。彼女を取り上げるメディアも多く、木村石鹸の知名度は飛躍的に伸びたと思う。
 
(ちなみにすごく知ったように書いているが、たくさん公開されている記事をまとめてるだけである笑 木村さんとは大昔に一度挨拶したことがある程度の面識で、峰松さんとは面識ゼロである。)
 

 
『SOMALI』に続いて2015年9月にはホームケアブランドシリーズ『re:koro』、2016年10月には峰松さんがゼロから商品企画に携わり仕込んでいたハウスケアブランド『&SOAP』、2017年6月には、かゆいところにも手が届くニッチな商品をラインナップした『クラフトマンシップシリーズ(Cシリーズ)』など自社ブランドを立て続けに打ち出していく。
 
そして2018年に新工場建設のための用地を三重県伊賀市に購入。大勝負に出た木村石鹸だが、今年ようやく新工場が稼働開始するもコロナの影響で中国からの注文がなくなり、赤字に転落。キャッシュが厳しい中で、新規に借入などを行い難局を凌ぐ。その後、巣ごもり需要で「各種家庭用洗剤全般で対応しきれないほどの注文が来て」中国の落ち込みをカバー。老舗の底力。
 
 
『12/JU-NI』ブランドサイト

 
2020年の新商品はシャンプー&コンディショナー『12/JU-NI』。TLなどを見る限りかなり人気だ。『12/JU-NI』の開発者である多胡健太朗さんは2013-14年入社。木村祥一郎さんが2013年に戻り、多胡さんや峰松さんなどの新しい力と90年以上続く職人の技とが融合していくことにより、木村石鹸を強くしていったんだなぁと思う(峰松さんは現在は木村石鹸を離れて、東京でご活躍中)。
 
 
 
さて、ざっとまとめてみました。たくさんの記事をまとめただけなので、細かい話は最後のリンクから各記事を見てみてください。
 
 


長く続く会社が昔から好きなんだけど、長く続ける、存続させるって大変。たまに「現状維持でいい」と言う人もいるんだけど、現状維持を維持するには現状維持ではダメなんですよ。「経営には引力がある。50メートル先の人の胸元にボールを投げるには真っ直ぐ投げたら届かない。角度をつけないと胸元には投げられない。そういう感じ」というわかりやすいのか、わかりにくいのか微妙な例え話をよくしてる。
 
木村石鹸の創業秘話がホームページに載っていて、とても面白い感じにまとまってたので紹介しておきます(全5回あります)。やはり変化を続けている。
 
100年つづく石鹸会社をつくった3人のナニワ商人(01)〜はじまりは、12歳の家出少年から〜
 
一方で、いくつかの記事でも書かれているけど、変化を嫌い、組織が硬直してしまったのが2000年代の木村石鹸なのかなと。老舗企業は伝統を守り続けている「だけ」と思われがちだが、実は変化の連続であるのが事実。変化しなければ続けることはできないのが会社。何を守って、何を変えるのか。このさじ加減が経営者の仕事なのかもしれない。
 


 
 
 
伝統のせっけん 世代交代で磨く 木村石鹸、三重に新工場(日経)
売れる売れないより、やりたいかどうか。社員を信じ、自分たちの商品を信じ抜く、木村石鹸の経営哲学(BNL)
木村石鹸がヘアケア商品を開発した理由──小さなつながりを、より深く、そして長く(Forbes)
「ピンチをチャンスに!」【第8回】木村 祥一郎さん | 木村石鹸工業株式会社(SILK)
進化する老舗石鹸メーカー ベンチャー型事業承継で成長(事業構想)
木村石鹸工業株式会社 / 代表取締役 社長 木村 祥一郎 氏│社長インタビュー(オオサカジン)
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